向こう見ずと苦労見ずって似てるよね

アイドルのお話をしましょう

”ABCD式分類法”を使ったケーキバースの独自解釈

【注意】

 この怪文章は、@Rune_communicatさん原案の「ケーキバース」を、クロみず (@963zuki) が独自に解釈し設定をまとめたものです。

 耽美からエロからグロまで多種多様な方向付けがなされるケーキバース世界線を、創作のための振れ幅を持たせながら一本化+オメガバース要素もついでに追加し、なおかつ現実の世界へ可能な限り適用することを第一の目的としています。本編はちょっとした解説記事を模した文章となっています。

 「ケーキバース」設定については、原案者の設定を翻訳したまとめを柊さん(@_hi_ragi)さんがprivatterで提供してくださっています。ケーキバースを初めて耳にするという方は、まずこちらの記事をご覧いただければ幸いです。

privatter.net

本文:4,110 文字 予想読了時間:7-10分

ABCD式分類法に基づくケーキ症候群の解説

はじめに

 ケーキ症候群(Cake syndrome)は比較的稀な疾患であり、後天的に味覚を失った「フォーク」と呼ばれる患者が、自覚症状を持たない「ケーキ」と呼ばれる患者の体組織や体液、排泄物等に強烈な嗜食衝動を覚えるという典型的な症状で広く知られている。時には人肉捕食のための猟奇殺人に至るケースがあるため、古今東西の社会において広く認知されてきた。史書に残る最古の記録は中国の『晋書』に見られ、日本においては1981年にフランス・パリで発生した██████事件が有名である。
 有病率はフォークが約1/1,000、ケーキが約1/10,000であり、この数値は地域や人種に依らず世界の各国でおおむね一定である。
 先天性の遺伝子疾患が原因だと長らく考えられていたが、遺伝医学が飛躍的に発展した今日に至っても原因遺伝子の特定には至っていないことから、最近では否定する向きが多い。一方、フォークに対する検査方法は20世紀初頭には確立され、同時に、「ケーキ・フォーク症」とかつて呼ばれていた疾病には数種類の型が存在することが明らかとなっていった。フォークの持つ型を基準にケーキも合わせて分類していくこの方法は、現在では「ABCD式分類法」として整理・体系化されている。

 

ABCD式分類法

 世界各国で最も広く用いられているケーキ症候群の分類法。ケーキとフォークの両方を同じ尺度で分類してるため利便性が高く、一般にもある程度認知されている。フォークが感じる匂いの種類と強度を基準にしたLewis式分類法、フォークの食人衝動の強さを基準にステージ1から4までで分類したGV式分類法が研究者や司法機関では補助的に用いられている。
 A、B、C、Dの4つの型(type)にケーキとフォークをそれぞれ分類する。ケーキ症候群の症状は、同じ型を持つケーキの『匂い』をフォークが嗅ぎ取った時にのみ顕在化し、ひとたび症状が顕在化したフォークには継続的な治療プログラムとカウンセリングが必要となる。適切な治療を施されなかったフォークのGV-Stage 1からGV-Stage 4への平均進行期間は5年であるが、本人の性格と周囲の環境、フォークとケーキの関係により進行速度は大きく変化し、時には自然治癒的にGV-Stageが逆行する例も報告されている。
 この4つの型に加えて近年はα型の存在も確認され、またそれぞれの型には多くの小分類が存在し統一が損なわれていることから、2018年にWHOによって改訂が予定されているICD-11における再分類が専門委員会において検討されている。
 血液検査で比較的安価に診断できるフォークとは異なり、ケーキの診断は人力に頼っている。つまり、ケーキの体液をフォークの協力者に嗅がせるのだ。この時、フォークがそのケーキを独占したいがため虚偽の申告をする可能性*1を考慮して、精神科医の立ち会いのもと、脳波や声のデータを記録しながら、3人程度のフォークに対して検査を実施する。そのため1つの型の検査に5万円以上の費用がかかり、特に協力者の絶対数が少ないD型検査は50万円を超えると言われていて、通常は実施しない(海外機関と連携するケースが多いため高額。しかも一事業者当たりの年間検査実施件数に制限をかけている機関が多い)。ケーキ検査を行うのはもっぱら、大衆への露出が多い芸能・マスコミ関係者だ。

 

A型(フォークの内の約50%、ケーキの内の約80%)

 最も軽度な症状を有する型である。多くの場合は、性行為の際に皮膚や体器官を舐める行為、体液や排泄物の摂取が伴う程度。食人に至る例もあるが、フォークの自覚を持たないまま一生を過ごす疾病者も存在する。
 かつては健常者とのボーダー域に属するとされ、ケーキ症候群から除外する研究者も一部いたが、α型の発見により近年ではそのような主張は見られなくなっている。

 

α型(フォークの内の約0.005-0.01%、ケーキの内の0%?)

 super-A型、A+型とも。検査ではA型と判定されるが、極めて猟奇的で残忍な性格と行動により区別される。一部の研究者はα型のケーキも存在すると信じているが、信頼できる報告例は未だ無い。存在していたとしてもα型フォークに優先的に捕食されている可能性が高いためだと解釈されている。
 α型フォークは全ての型のケーキに対する捕食者である。ケーキの匂いを極めて敏感に嗅ぎ取って区別することができ、1953年にイングランドで射殺されたα型フォーク(当時はA型と判定)が残した詳細な手記がLewis式分類法の基礎となっている。
 α型の存在は過去500年間にヨーロッパ各国の猟奇殺人鬼が引き起こした事件を研究した神経学者により提唱された。学説の域を出ない存在だったが、1982年に韓国で、1984年にナミビア(当時南アフリカ統治下)とノルウェーで相次いでα型フォークが連続殺人容疑で逮捕あるいは射殺されたことをきっかけに、存在が認められるようになった。

 

B型(フォークの内の約40%、ケーキの内の約10%)

 猟奇的、典型的なフォーク像として、B型は世界各国で古くから認知されてきた。
犯罪率、犯行人数ともに最大の型で、重点的に治療と対策が各国で実施されている。犯罪抑止の観点から研究が最も盛んであり、B+、B-、Blow、Bhighなどの小分類がある。
フォーク迫害が特に深刻な型であり、ABCD式分類の検査法が確立された1920年代以降、共産圏やアジアアフリカの独裁国家では弾圧・収容が一般的に行われていた。多くの民主主義国家においても問題は深刻であり、人権団体やフォーク当事者団体による活動が各国で行われている。

 

C型(フォークの内の約10%、ケーキの内の約10%)

 ケーキによるフォーク支配、すなわち給餌関係を基礎とする型である。他の型とは異なりC型フォークによる食人目的のケーキ殺害事件は極めて稀で、また閉鎖的な環境(クローズドサークル)に閉じこもって関係を築くため、問題が表面化しにくく、また存在が発覚する時はたいていは手遅れとなっている。
 ケーキは普通、複数のフォークを従えている。フォークの間には明確な序列が存在するが流動的であり、サークル外からは理解困難なメカニズムによって頻繁に入れ替わる。サークルの外部、すなわち社会への関心はフォークからは失われる。
ケーキの性格は多くの場合、高慢か包容的かで二極化するが、隷属するフォークに対する支配の正当性を確信している。フォークとは異なり、社会的地位や関係を維持し、社交的であり続ける。
 C型サークルの存在はたいてい、フォーク同士の食人を目的としない殺人事件の隠蔽失敗により露見する。ケーキの給餌能力を上回る人数のフォークがサークルに存在した場合、あるいは、フォークの序列争いが苛烈化した時に事件は発生する。1つのサークル内でフォークの人数は3-10人程度であり、最多では27人のフォークを従えるサークルが1997年に日本の███市で報告されている。

 

D型(フォークの内の約0.1%、ケーキの内の約1%)

 つがい型(brace type)とも。何らかの収奪関係を伴う他の型とは異なり、つがいを形成したケーキとフォークは概ね『友好的』であり、C型にいくらか類似する食餌行為を続けながら、時には共依存的な関係を築く。他の型に比べて極めて稀な型であるため、つがいを形成することなく健常者と同様の人生を終えることも多いが、その場合のD型の寿命は、その国の市民の平均的な寿命より有意に短いことが報告されている。また、つがいを形成した後にパートナーを失ったD型も同様である。
 数の少なさを補うためか、α型に匹敵する敏感な嗅覚をD型フォークは有し、視界外の距離にいるD型ケーキを嗅覚の働きのみで探し出すことが可能である。初回接触時だけに見られる『甘味の海に溺れるよう』と表現される極めて強力なD型ケーキのフェロモンは、衝動に突き動かされて迫ったD型フォークを昏倒に至らしめる。D型フォークがD型ケーキに危害を加えたという例はこの初回接触時に限られていて、匂いの誘惑に慣れたフォークは、以降は理性を失うことは無くケーキとの友好的な関係を結ぼうとする。
フォークに対しておよそ1/10程度の人数しかケーキが生まれない他の型とは異なり、D型のフォークとケーキは各地域においておよそ同数である。既につがいを形成したD型ケーキの匂いを他のD型フォークは嗅ぎ取ることが可能だが、甘い匂いと同時に焦げたような臭いを感じるため、本能的に忌避するとされている。

 

本文の初出

”ABCD式分類法”を使ったケーキバースの独自解釈 - Privatter

*1:1927年、当時よりケーキ研究先進国だったカナダのモントリオール市で、虚偽の結果を申告した検査協力者が、自身の嗅覚を頼りにケーキを探し出し、拉致監禁、殺害するという事件が起こったことを教訓としている。被験者から50km以上離れた土地に住む検査協力者を原則として採用する『50kmルール』はこの事件に由来している。